MIND DRIVE

思い通りに心を動かし,人生を好転させるために

なまけもの必見!やる気を出すためのたった一つのシンプルな原則

やらなくてはならない仕事や勉強があるのに、どうにもやる気が出ない。

なんとかしたくて、やる気を出す方法をネットで検索してみたものの……、

  • 規則正しい生活を心がけ、健康状態をたもつ
  • 好きな音楽を聞くことで感情を高める
  • 気分を一新するために引っ越しをして環境を変える
  • 運動をして脳をすっきりさせる
  • 周囲に応援してくれる人がいる環境をつくる
  • 瞑想をすることで自然とやる気がわいてくる

ちょっと調べただけでも山のようにいろんな方法が出てきて嫌気がさします。

これだとたくさんありすぎてどれが正解かわからないし、そもそも「やる気を出す方法10選」や「簡単にできる20選」などという記事ばかりで、とても読む気になりませんよね。

 

今回のお話

てっとり早くやる気を出す方法を知りたい人向けの記事です。

 

 

やる気の大原則

やる気を出すためのたった一つのシンプルな方法

 

答えはとっても簡単です。
やる気を出すためには、まずは行動することが大事です。

 

あのねー、それができないから困ってるんでしょ

 

確かにその通りなんですけど考えてみて下さい。

今まで「やる気が出てから仕事しよう」とか、「やる気が出るまで待っていよう」という方法でうまくいった試しがあるでしょうか?たぶんないと思います。

 

断言しますが、ただじっと待っているだけでやる気がわいてくるなどということは決してありません

 

たとえば、勉強するときのことを考えてみてください。

多くの人は「やる気になったら勉強しよう」と考えがちです。

しかし、この考え方は根本的に間違っています。

 

 

「やる気が出てから勉強する」のではなく、「勉強するからやる気が出る」のです。

因果関係が逆です。

 

 

なぜ、そう言い切れるのか。

それを知るために、まずは行動のしくみを知ることから始めましょう。

 

行動するとなぜやる気が出るのか?

 

それは行動することで良い結果につながり、前向きな気持ちになるからです。

 

たとえば、

  • めんどうくさいと思っていても、いったん外に出てジョギングをし始めれば気分が良くなり、もう少し走れるかもと思うようになります。
  • 退屈だなと思っていても、参考書の問題が一問でも解ければうれしくなり、もう少しだけ先の問題もやってみるかという気持ちがわいてきます。

なにも特別難しいことに挑戦する必要はありません。

ただ、目の前にある課題の一番簡単なところから始めるだけで良いのです。

 

私たちは、これまでの自分から一歩でも前進していると感じることができれば、それが喜びとなり自分への自信も高まっていくようにできています。

 

要するに行動することで、「自分はやればできる」という気持ちになれるということですね。

心理学ではこの「やればできる」という感覚のことを自己効力感と呼びます。

 

■ポイント■
行動して少しでもうまくいけば、やればできるという自信がわいてくる
 

やる気と行動の関係とは

 

やる気というのは、表現を変えれば「自ら行動する気持ちになること」といえます。

 

自ら行動する気持ちになるときとは、どんなときでしょうか。

それは、行動した後に良いことがあるかも」という期待があるときです。

 

この期待がどんな効果を及ぼすのか、例としてペットのイヌに「お手」を訓練するときのことを考えてみます。

 

あなたが飼い主ならどちらの方法が効果的だと思いますか?

  1. イヌにひたすら「お手」と言って、自分から勝手に「お手」をするようになるのを待つ。
  2. イヌの手(前足)を自分の手に持ってきて、「お手」と言い、その後ごほうびの餌をあげたり、たくさん頭をなでてあげたりする。

簡単ですよね。答えはもちろん2です。

 

1の場合、イヌはそもそも「お手」が何かわからないし、偶然それに近い行動をしたとしても何ももらえないので、イヌはいつまでたっても「お手」をするようにはなりません。

→期待がなければ自ら行動することもない。

 

2の場合、この手続きを何度かくり返すうちにイヌは「お手」をすると「ごほうび」がもらえることを学習します。したがって、イヌはごほうびがもらえること(良いことがあること)を期待して、自分から「お手」をするように行動が変化するのです。

→将来良いことがあることを知っているから、自ら行動するようになる。

 

この手続きを心理学ではオペラント条件づけ(あるいは道具的条件づけ)と呼びます。

 

ここで言いたいことは、イヌも私たち人間も行動が生じるしくみは共通しているということです(もちろん、ネコもネズミも他の動物も)。

 

私たちは行動した後の結果を予測し、きっと良いことがあるだろうと期待できるときに、やる気がわいて自ら行動するようになるのです。

 

■ポイント■
行動した後に「良いことが起こるかも」という期待がやる気を生じさせる

 

行動した後のごほうびって本当に必要なの?

ここからは少し発展的な話になるので、もう十分という人は結論まで飛んでもらって大丈夫です。

 

ごほうびにつられて人は動くんでしょうか?
内なるやる気がわいてくるまで待った方がいいんじゃないですか?

やる気がないと言っている時点で内なるやる気がわくことを期待しない方が良いです。
それよりも行動することでどんなメリットがあるかを考えた方が手っ取り早いです。

 

アメリカの心理学者デシとライアンはやる気が出る順番を大きく3つのステップに分類しました(Deci & Ryan, 1985)。

 

やる気が出る順番

無動機づけ外発的動機づけ内発的動機づけ

無動機づけとは、そのままの意味です。なんにもやる気がない状態です。

 

内発的動機づけとは、ゲームに没頭したい、生物の観察が好き、テニスがしたいのような、行動自体が目的である動機づけのことです。

 

外発的動機づけとは、お金が欲しいからバイトをする、先生に叱られたくないから宿題をする、といった行動とは別に動機がある、あるいは行動とその行動を分けることができる動機づけのことです。

 

たとえば、学習塾に通う二人の高校生がいたとします。

彼らに塾に通う理由を聞いてみると、

Aくん「両親に言われて仕方なく塾に入った」

Bくん「自分の目指す大学で将来研究に取り組みたいから」

こんな答えが返ってきました。

 

どちらも勉強をするという行動自体は変わりがありませんが、二人のモチベーションの程度には明らかに違いがあります。

 

それが行動の自律性です。

 

自律性とは、自分の行動を自分自身で決めているかどうかということを意味します。

つまり、勉強をするという行為自体は同じでも、Aくんは両親から言われてしぶしぶやっている(自律性が低い)のに対し、Bくんは自らの意思で進んで行っている(自律性が高い)という違いがあります。

 

内なるやる気というのはこの自律性が高い状態にわいてくるのであって、やる気がない(無動機づけの)ときにはまったく生じ得ません。

 

ですから、まずは行動した後のごほうびを期待する外発的動機づけによって自らを動かしていくことの方が先決です。

 

脚注:やる気とごほうびの関係については、また別の記事で詳しくあつかう予定です。

まとめ:案ずるより産むが易し

 

やる気が出ない、めんどうくさいと自ら動けずにいる人は、行動した先にどんな良い結果が待っているかを具体的に想像してみましょう。

 

行動したらどんな良いことがあるか具体的に想像する
  • この文法を覚えたら、あの英語の文章を読めるようになるだろう。
  • エクセルの使い方を覚えたら、この書類のデータも楽にまとめられるようになるだろう。
  • 1kmでも歩かずに走り切れたら、きっと次は2kmでも走れるようになるだろう。

 

やる気を出すために、難しいことや大きな課題に取り組む必要はまったくありません。

あなたにとって、目の前にある課題のもっとも易しいところから始め、それをクリアする喜びを積み重ねていくのです。

 

きっとあなたは、自分なら「やればできる」という自信を持てるようになるはずです。

 

何事もやってみれば案外簡単に思えるものです。

やる気が出ないと悩んでいるときほど、とりあえず目の前のことに取り組んでみましょう。

 

こころが動けば、人生が変わる

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
次回も生活の役に立つ心理学の情報をお届けしますので、どうぞお楽しみに!

 

文献

Deci, E. L. & Ryan, R. M., 1985, The general causality orientations scale : Self-determination theory in personality. Journal of Research in Personality, 19, 109-134.

今田寛 1996 『学習の心理学』培風館

坂野雄二・前田基成 2002 『セルフ・エフィカシーの臨床心理学』

櫻井茂男 2012 「夢や目標をもって生きよう!」鹿毛雅治編『モチベーションをまなぶ12の理論』金剛出版pp.45-72.